少し遅れて訪れた狂気 | KIMURA

 

コンテンツの差別化を図っているにも関わらず、稀に熱が入り指が止まらなくなってしまってInstagramにも長々と文字を入力してしまうことがある。先日のKIMURAのシャツの時がそうだった。

ちょっと喋りすぎた感じもあるのだけれど、この狂気的な個性の宿るシャツを語るにはまだ足りていない気がしてこうやってまたキーを叩いています。





6月頭の某日、木村さんから一本の電話。5月納品の予定が6月になってしまったことへの謝罪と、次の土日には納品が出来そうだという内容だった。個人的にKIMURAの製品に「売り時期」みたいなものはないと思っていて、急いで売るような製品でもなければ、いつ届いたって最高だと思ってるから、「全然いつでも大丈夫っすよ〜」なんて軽口で返して電話を切った。


結果、その土日は納品がないままに過ぎ(僕もシャツの納品予定をすっかり忘れてた)、週明けにもう一本の電話。「ようやく上がったので、今からお持ちしてもいいでしょうか。」

数時間後、数枚のシャツを入れた大きな鞄を背負って、縫い終えてやりきったような表情を浮かべた木村さんが現れた。





今回納品頂いたシャツが、これぞKIMURAを「狂気」と言わしめる20列のステッチを叩いたシャツ。カラーはオニキスみたいな硬度のあるBlackとスチールみたいな冷たさを感じるCharcoal。

140番手の双糸というとても細いスーピマコットン糸を高密度に織り上げた、高級ドレスシャツ用のブロード。ザクザクと音がするようなハリコシと眩しいくらいに強い光沢が美しい。

そんな高級素材に、12mm幅の中に20列のステッチを叩き入れている。単純計算で一本のあたりの幅は0.6mm。これを20列もしくは10往復ミシンで走らせる。人間がわざわざ手を動かしてやる仕事じゃないけれど、この気の遠くなる作業を木村さんはあえて取り入れる。何度もミシンに打たれた生地は、高く波打って強く畝り捻れを見せる。

きっとラグジュアリーブランドの高級シャツになるべく生まれてきたこの生地たちも、まさかこんな非情な仕打ちを受けることになるとは思ってもみなかったはず。









極上の素材に狂気的な手仕事を添えて仕立てたのは"Split Ragran Sleeve"のシャツ。

スプリットラグランとは前面をラグランスリーブに背面をセットインスリーブとして切り替えた、1960年代アメリカを代表とするオーセンティックなコートに見られる作り。綺麗なシルエットを描きながらも腕の可動域を確保した、先人たちの創意工夫の賜物。だけど、シャツに使われることは殆どない。多分あまり意味がない。KIMURAのこのシャツを除いては。

アームサイドに入る20列のマルチカラーステッチと140/2の生地が持つ強い艶が掛け合わせることで、トラックジャケットみたいな匂いがしてくる。ジャミロクワイよろしくなadidasのATPを彷彿とさせる。ただ見た目だけをトラックジャケット然とさせたいのならば、一枚地のラグランスリーブにしておけば作るのも簡易化出来るだろうに、わざわざ二枚地のスプリットにした理由は肩周りの美しさだろう。ダレて余分な皺が出来ることもなく肩が自然に立ち、ドレスシャツとしての顔は一切崩さない。木村さんの妥協の無さが格好良い。






綺麗なシャツを作ることは目的にせず、極上の生地だからこそ過度なステッチを打ち、パッカリングによる皺と陰影を取り入れた唯一無二のバランス感覚。

概念が崩壊しているのだから、どんなボトムスを合わせても面白い。綺麗なスラックスはもちろん、こなれて野暮なジーンズでも寝巻きみたいなイージーパンツでもジャージでもワークパンツでもショーツでも。何しても新しく映るので新鮮さを楽しんで下さい。


木村さん「これはウチにしか出来ないシャツです。」

そりゃそうだ。出来ないだろうし、そもそも誰もやらないと思う。









KIMURA
20 Needle split raglan sleeve shirt
black, charcoal.

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