モードと文学と音楽と。 | Fujimoto

 



バグったような暑さの日が数日ありましたが、外を歩くのが気持ち良い今日この頃。

深夜一時。オールナイトニッポンやJUNKを聴きながら缶チューハイを片手に、もう片手ではドラクエウォークをって感じで毎晩ふらふらと夜の散歩に出るのが日課。取り憑かれたようにやや肌寒い日でも敢行していたところ風邪を拗らせた。


なんとか病み上がって、予定通りに開催させて頂いたFujimoto 2023FWの受注会。

初日の土曜日はオープンから三時間ほど来客無し。藤本さんと二人きりでゆったりしっとりと各々のファッションルーツについてお喋りしていました。

藤本さんが歩んだキャリアと高い経験値、見てきた物のレベルが高くって同い年ながらに悔しかったけど、同時代に歩いたルートの違いが面白くって二日間ずっとこんな感じでもいいなーと思ってました。

15時を過ぎた辺りから二日目まで沢山のご来店があり、忙しなくて、やっぱり人が来てくれた方が何倍も良かった。一日目はçanomaの渡辺さんが来て、二日目はsatouの佐藤さんが来て、お客さん交えてみんなで話せたのが楽しかった。お話に来て頂けた皆様、ありがとうございました。


モードに憧れ、国内デザイナーズで研鑽し、ハードコアとパンク、そして文学を愛するFujimoto。プロダクトファーストではなくコンセプトファーストで立ち上がる彼のコレクションは、昨年秋冬のデビューから思想が強過ぎて伝え方が大変。

今季のコレクションについてもまずは直接本人に伝えてもらえた方が面白いかなぁ。なんて思って下手なことは言わずにいましたが、イベントが終わったので次は僕が登壇します。









2023 Spring / Summer のテーマとなった坂口安吾の随筆「堕落論」。


堕落論』(だらくろん)は坂口安吾随筆評論。坂口の代表的作品である。第二次世界大戦後の混乱する日本社会において、逆説的な表現でそれまでの倫理観を冷徹に解剖し、敗戦直後の人々に明日へ踏み出すための指標を示した書。敗戦となり、特攻隊の勇士も闇屋に堕ち、聖女も堕落するのは防げないが、それはただ人間に戻っただけで、戦争に負けたから堕ちるのではなく、人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ、と綴られている。旧来の倫理や道徳の否定といった次元ではなく、偉大でもあり卑小でもある人間の本然の姿を見つめる覚悟を示している作品である[1]

Wikipediaより引用 


小難しいことを抜いて伝えると、第二次世界大戦により敗戦国となった暗いムードの日本を俯瞰して、人間らしさを説いたような作品。鼓舞とか賛美ってよりは、人間だし別に良くない?仕方なくない?って感じ。

この「人間らしさ」をアイコンに、作中に綴られる「生きよ堕ちよ」という言葉から "MAN LIVES, MAN FALLS"というスローガンを掲げている。







藤本さん曰く、安吾はその時々で考えが変われば平気で前言を無視して違うことを言う作家らしく、その人間らしさも格好良いんだって言っていた。藤本さんも基本的にはどんなことだって「人間だからいいんですよ」と褒めてもしくは許してくれるスタイルで、仏とか教会みたいな人だなーと思ってます。いつか派手に酔っ払ったら懺悔してしまいそう。

そんなコンセプチュアルなコレクションなんで、正直に言うと洋服の説明も「最高に格好良い」と「考えるより感じろ」なんて言葉だけで片付けたいんだけど、それだと僕の存在意義がなくなるので解説しすぎない程度にお伝えさせて頂きます。





当時、パンクスたちのアイコンとなっていたモスリントップをFujimotoらしい解釈で表現。天然素材の柔らかい編み地とハリのあるブロードの切り替え。

ざっくりとそのままロングスリーブとして被っても良いし、ボタンを外して肩を覗かせても良い。ノースリーブくらいまでアームが外れるから垂らしたり、前後で括ったり。レイヤードしてもめちゃくちゃ格好良い。

深く考えずになんでもありの精神で、自由に楽しみ方を見つけてほしい。









フロントダブルの長物はコートじゃなくてガウン。今季の顔。

製作にいたってガウンのパターンを研究したところコートとは似て非なるものだったそうで、着るとなんとなくわかります。コートにはないリラックスした落ち感と安心するような包まれ方。ふっくらと折り返したカフスも良い。

ポケットは端をフラして縫い合わせ、刺繍を縫製として使ってる。秋冬のライ麦同様に並の刺繍屋じゃできないらしくて、ビッグメゾンも手がける熟練の技師に依頼しているみたい。

背中のストームフラップっぽいのはボタンを外せばコンバーチブルになるから、お気に入りのプリントを覗かせてもいいし、インナーをアクセントカラーに差し込んでも面白い。

Blackは高級シャツに使われる100双のブロード、Whiteはいなたさと素朴さのあるネップ地で。









スウェットのグラフィックが毎シーズン格好良くて、毎シーズン欲しい。音楽のグッズやスーベニアを目指していて、タッチもシルエットも熟れたダル着然としてる。製品染めして、プリントして、そこからまた洗ってみたいな手間を惜しまない拘り。まじで格好良い。







着る鞄。ベストと同じ使い方で、レイヤードが楽しくなる。鞄を持ちたくない男性陣の味方。白いキャンバスと黒いカウヌバック。キャンバスは少しずつ汚しながらワークウェアさながらに使い込んで欲しい。ヌバックは引くほど高いけどめちゃくちゃ良い革。何年もクタクタになるまで。







最後は前述したスローガンを印字した大判のストール。めちゃくちゃ大きいので身体をすっぽり包んでもいいし、ポスターみたいに部屋に飾っても良い。





所々で垂れる組紐も前シーズンと同じく藤本さんのお手製。洋服の表情を立てる為に最終の仕上げにも随分と手間をかける人で、展示会前に飲みのお誘いをしたところ手作業工程が終わらな過ぎて寝る暇すらないと言っていました。いや、まじで格好良い。





受注会の余韻と共に、ざっくり力抜いて書いてみました。


モードの枠内にあるFujimoto。ウチのラインナップの中ではファッションコンシャスに寄った独特の空気感、リアルクローズとして纏える豊かな素材と余白。

モスリントップや背中の空いたガウンなんて着方わかんねぇよって方もいらっしゃると思いますが、あまり尻込みせずに世界観とムードに飛び込んで、呑まれてみてほしい。

ファッションの楽しさは現状維持より前進。新しい経験にあると思います。


小難しい思想を宿して小難しいことやってるブランドですが、頭より感覚で。


Onlineは未掲載となっているので、ご希望の方はメールなりinstagramのDMなりでご連絡下さい。


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𝐂𝐎𝐄𝐋𝐀𝐂𝐀𝐍𝐓𝐇


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