生地の妙 | YUTA MATSUOKA exclusive
まだ冬なのか、いよいよ春なのか。
寒暖な毎日に振り回され、装いに頭を悩ませる二月の末。
YUTA MATSUOKAから大きな箱が届きました。
毎度のコレクションで感じるのが、松岡さんが生地へ向ける強い拘り。拘りというより執着の世界にある気がする。
YUTA MATSUOKAでは毎シーズンの1st deliveryと共にLOOK BOOKと生地見本の綴りが届く。この生地見本には一枚一枚に説明書きが添えられ、僕らはこれを捲りながら生地の美しさを改めて理解する。
そんなところにまで手間を惜しまない姿勢から、松岡さんの生地に対する強い想いが伝わってくる。その美しさを伝えたいという気持ちが溢れている。
この春夏のコレクションでも、ともすれば変態的とも言えるほどの生地への熱があった。
硫化染めのキャンバスリネン、赤錆をモチーフにムラ染を施した尾州のデッドストック、浜松の素朴なストライプリネン。
説明を受けながら一つ一つを見て、触って、うっとりとしていく中で、僕が一際に惹かれたのが "バックサテンジョーゼット" という生地だった。
表にリネン、裏にコットンを這わせた二重織の生地。織りの組織が複雑で、ずいぶんと手間もかかる為に織れる機屋が限られるという希少な生地だそう。
ジョーゼットとは日本でいうところの縮緬のことで、表には細かい粒立ちが見える。一方で裏面はコットンサテンならではの柔らかな安心感がある。
色味は限りなく黒に近い深さのDark Green。緑と言われなければわからないくらい殆ど黒なんだけど、この僅かな緑味が光を当てた時に青白く映る。暖かみのある黒ではなく、少し肌寒さを感じるような黒。明朝の光を浴びたような黒。
野趣があって、美しくて、でも張り切ってなくて。僕らの日常にすっと馴染んでくれそうな生地。
この生地を用いて仕立てられた洋服には4型のバリエーションがあった。レディースコート、ベスト、新型のパンツに僕の大好きなバギーパンツ。
バギーパンツは絶対に履くとして、こんな美しい生地なのだから上下で着たい。ベストも良いけどもっと大ぶりな羽織ものがいいなぁと言うことで、松岡さんに我儘を言ってみる。
この生地でロングシャツって作れないですか?
そして本日、COELACANTHのexclusiveとなるロングシャツが届いた。
気持ちの昂揚に歯止めが効かず、プレゼントをもらった子供みたいに忙しなく包みを開けて広げる。
特別に仕立ててもらったロングシャツは、想像していた何倍も風情のある顔をしていました。
全体像を見ると、光を吸い込んでしまうような燻んだような質感。でも目を凝らすと仄かに、粒子状の光沢があったり。
情緒と訝しげなムードを持ち、淡くて、憂いがあり、奥深くて繊細。それでいて逞しい。
言語化が難しくて形容詞を盛り込みすぎているけど、写真だけで伝わるものでもなさそうなので努力しています。
大きな生地分量を取ったからこそ、生地が揺れる。陰影が映る。さらに憂いを帯びる。本当に美しい。奥ゆかしい。
コート然とした印象を受けるけれど、そこはあくまでロングシャツ。今の季節であれば、ジャケットやコートを重ねて楽しんで頂ければ。きたる暖かな気候の元では羽織として風に大きく揺らしながら。
真夏だけは似合わないけれど、春だろうが、秋だろうが、冬だろうが、このロングシャツと共に沢山の情景を訪れてほしい。それぞれの季節を光を浴びることで、表情がより明瞭になると思う。
まずはその目で実物を見て、袖を通して、揺らしてみて頂きたい。
発売は2月23日(木祝日)から。少数での生産なのでとりあえずは店頭限定ですが、どうしてもって方はご連絡を下さい。
2023SSの立ち上がりとして、その他のラインナップも多く納品されていますので、皆様のご来店を心よりお待ちしております。
YUTA MATSUOKA 2023 spring / summer
Drop in store 2.23 holi 12 p.m.~
𝐂𝐎𝐄𝐋𝐀𝐂𝐀𝐍𝐓𝐇
東京都渋谷区渋谷2-3-3 青山Oビル 2F
[ mon, tue, fri ] open 13 - 19
[ sat, sun, holi ] open 12 - 19
[ wed, thu ] appoint only.
19-23時のお時間でも事前連絡を頂ければご来店頂けます。
普段お時間の合わない方はお気軽にご連絡下さいませ。
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