八重蔵さんの綾織シャツ / satou - grandad shirt.

 

三連休を前に、各ブランドから2022AWの1st deliveryが続々と届いた。

ダンボールが積み上げられた店内。

特にブランドを確認するわけでもなく、半ば機械的に開封を始めた。


開けた瞬間に、懐かしさのある線香のような香りが立ち上った箱があった。


差し出しを見るまでもなく、こんな香りをさせるのは佐藤さんしかいないと、そう思った。





忙しなさを極めた三連休を終え、ゆったりとした時間が流れる1日。

せっかく新作たちが届いたのだし、なにかONLINEに掲載しようと意気込む。

何にしようか。敢えてweb上では魅力を伝えにくい、その反面で話し始めると途方もなく長くなってしまうsatouのシャツを選んだ。


Instagramで紹介しようとも思ったけど、やはりとんでもない文字数になった為、急遽BLOGに変更いたしました。



satou 2022AW - grandad shirt



前期で展開されていた"Grandfather shirt blouson"をアップデートし、よりシャツらしい形となった今作。

展示会で見た僕の第一印象は、「あれ、なんか普通になった?」という感じでした。


1940年代くらいの古いシャツに見られるような、カラーレスのバンドカラー。

たっぷりと取られた身幅に、背面に取り付けられたあまり意味を為さないベルト。

なんだろう、良い形だしベーシックで着やすいだろう。でも、この既視感に満ち溢れた形のシャツを佐藤さんが作る意味はなんだろうか。






シャツを見ている僕に佐藤さんが一言、「児島で長年この生地だけを作り続けているお爺さんがいるんですよ。」

この生地だけ?そんなことある?長年?生計立つの?と色々な疑問が頭の中を埋め尽くした。それくらいこの生地は「なんの特徴もない」生地だった。いや、特徴のわからない生地だった。





この生地の名は「八重蔵さんの綾織」。

デニムの聖地である岡山県 児島でこの生地は作られている。

ヨンマルソウと呼ばれる40番手の双糸を織り上げた綾織の生地。平織もある。他には何もない。八重蔵さんが織る生地は、このヨンマルソウの綾織と平織しかない。

何十年もの間、毎日毎日、ひとりでひたむきに、この二種類の生地と向き合い続けている。


素材にインドネシア産のオーガニックコットンを用い、日本国内で紡績された糸。

この糸をそのまま、防腐剤も糊も使わずに、ストレスを与えることのないようシャトル織機でゆっくりと織り上げる。

まるで我が子を育むような話。

何も加えず織り上げた結果、程よい湿度と空気を含んだオーガニックコットン本来の柔らかさが残る。そして、品の良い張りと腰が生まれる。

一見ではなんの特徴も感じなかったこの生地だけど、実際に触れながら説明を聞いていると、指がその感触の違いに気付く。ああ、なんかずっと触っていたい。

直接会ったことのない八重蔵さんだけど、なんだかその人間味にも触れられた気がした。





素朴さと自然味が溢れ出ている生地は、着用や洗濯を重ね経年することにより、より生地の風合いが増すのだという。

何年も着て、くたっと草臥れた様はさぞ美しいことだろう。人と同様に年老いた優しい顔をしているのではないだろうか。


佐藤さんが敢えてこのさっぱりとしたシャツに仕立てた理由がわかった気がした。

おそらく、あまり手を加えずに素材本来の味を楽しんで欲しかったんじゃないだろうか。

八重蔵さんがそのままの糸から生地を織るのと同様、生地の魅力をそのまま届けたかったんじゃないだろうか。





袖を通すと、思った通りの心地良い肌当たり。

たっぷりと取られた身幅により、生地の落ち感や動きが豊かに現れる。

深いバックプリーツが綺麗に円錐型のラインを作る。

背面のベルトはタックインしたときのアクセントも兼ねて取り付けているらしい。

確かに後ろ姿も愛嬌がある顔をしている。






晒しの"off"と藍染めの"ai"による二つのカラーバリエーション。

aiは前期同様に宮崎県の伝統技法である「じゅうじ染め」を用いて染め上げられている。

天然の草木を用いた藍染め。

前期はムラ染めだったけど、今回はより藍の本来の美しさを強調する為に何度も繰り返し染め上げられている。

生地の豊かな風合いに加え、経年による褪色も楽しめる仕様。





日本古来の伝統や技術を愛し、継承を願う。

佐藤さんらしい、satouならではのプロダクト。

一見はわからずとも、そこにはしっかりと熱い思いと思想が込められていた。


ぜひ、指と肌の感覚を研ぎ澄ませて、長く長くお付き合い頂きたい一品です。


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P.S

今季のsatouのアイテムには、岐阜県 飛騨高山の渋草焼き「渋草柳造窯」との協業による陶器のタグが縫い付けられている。

吸水性のある特別な釉薬を使用している為、アロマオイルや香水を付けてアロマディフューザーとしてお楽しみ下さいとのこと。

本当に変わったアイデアを思いつく人だ。

でも、佐藤さんらしい温かみを感じる、とても素敵なタグになっていた。




𝐂𝐎𝐄𝐋𝐀𝐂𝐀𝐍𝐓𝐇


東京都渋谷区渋谷2-3-3 青山Oビル 2F


[ mon, tue, fri ] open 14 - 20

[ sat, sun, holi ] open 13 - 20

[ wed, thu ] appoint only.


10-14時、20-24時のお時間でも事前連絡を頂ければご案内可能です。

ゆっくりとお過ごししたい方はお気軽にご連絡下さいませ。


※店内商品につきましては、常時入れ替えを行っております。

お目当ての物が見つからない場合には、お気軽にお申し付け下さい。

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